今日の戯言・第一夜

こんな夢を見た。腕組みをして枕元に坐っていると、仰向に寝た女が静かな声でもう死にますと云う。何となく悲壮な雰囲気が場に漂っていたが、元々空気を読む気は更々無い性質なので、むしろ女の言葉に食い気味に「嘘をつけ」と間髪入れず返してやると、女はむくりと起き上がって「いやいや死ぬからマジで」と元気な声で言葉を吐き出した。そして「だるいわー」とか云いながら再び横になった。それを見た私は今度は一拍の間を置いた後、「まず死なないね」と一語々々しっかりと発音し、尚且つ半笑いで云ってやると、女は「うわ、台無しだわ自分」と憤慨しながら、何故か枕の下に隠してあった拳銃を取り出し、その照準をぴたりと私の眉間に向けた。慌てた私は「おい止せ、話せば分かる」と何処ぞの首相の台詞を拝借したが、「今更遅いわ」と女は不気味にふふふと笑いながら身を起した。「最早どうあっても許さぬ。我が愛銃、このスミス&ウェッソン&バーバラが貴様を始末する」 「ちょっと待て。バーバラって誰やねん?」 状況が状況であったのだが、やはり私は空気を読まなかったので、素直に疑問点を口にした。スミス、ウェッソン兄弟は一応知識にあるのだが、浅学なものでバーバラは存じ上げない。私の問いに女は素直に応えた。「今はスミスの恋人ですが、元はウェッソンと付き合ってまして、実は今でも両思いなんです」 「何その三角関係?!」 女はがちりと撃鉄を起こしながら、再びふふふと黒く微笑んだ。「さぁ大人しくするが良いさ。私の愛銃が火を噴くぜ!」 「それ絶対、嫉妬の炎だ!」 何故きな臭い死を目前にこんな漫才みたいなやり取りをしなければならないのだ、とぼんやり思ったが、「まぁ寝る前に『化』のDVDを観た所為だろうな、こんな夢見たの」と、この時初めて気付いた。やっぱ八九寺さんが好きなのさね。