今日の辞世

  悠々たる哉天壤、
  遼々たる哉古今、
  五尺の小躯を以て此大をはからむとす、
  ホレーショの哲學竟に何等のオーソリチィーを價するものぞ、
  萬有の眞相は唯だ一言にして悉す、曰く「不可解」
  我この恨を懐いて煩悶、終に死を決するに至る。
  既に巌頭に立つに及んで、
  胸中何等の不安あるなし。
  始めて知る、
  大なる悲觀は大なる樂觀に一致するを。

辞世の句としては日本では一番有名とも思われる、藤村操の「巌頭之感」でございます。まぁ有名なだけあって現在までに様々な考察が為されているので、今更私がどーこー云うまでも無いんすけど、取り敢えず私なりの言葉で超訳してみますわよ。

  やっべ、世界広いわ。宇宙キター。
  あと何時から始まってんだか知らない時間ってすげーわ。
  150ぐらいの背丈で、この広くてすげーやつの事を考えても答えが出ないっすわ。
  何か良い事云ってそうな哲学にしても、特に信憑性とか無いし余計解らないっす。
  この世の真相とか云っても、要は「不可解」の一言で済んじゃうんじゃないかしら。
  まぁ色々悩んだんだけれども、結局解んないからこの世から消える事にします。
  こうして飛び降りるために華厳の滝の絶壁に立っていても、特に不安とか無い感じ。
  こうなって初めて分かったけれども、達観したら悲観も楽観も大差無いっすね。

……まぁちょっと超訳過ぎたかしらん。不快に思った方がいらっしゃいましたらあしからず。でもアレよね。自分なりの訳でも自分が納得したら良いと思うの。よくテストで見たけれども「この時の作者の心境を答えなさい」とかゆーのが一番困りますわよね。んなもん作者以外知りようが無いやんか。後付けの多数決をなぞらせてどうすんねん。まぁ学生時分の私は「締切怖いわあ」って解答して、後で先生にめっちょ怒られたんすけど、別に間違ってるとは限んない気もするんすけどねー。うん、その時の作品は漱石の「彼岸過迄」だったわけだし。ああ、そー云や藤村操って漱石の教え子でしたわね。彼の投身自殺が漱石晩年のノイローゼの一環とか云われてますけど、まぁ「I LOVE YOU」を「月が綺麗ですね」と訳すぐらいの繊細さと奥ゆかしさを持つ人ですから、それこそ「巌頭之感」ばりに色々悩んだんでございませうなあ。若しくは夢日記なんて付けたからですわね。でまぁ話を「巌頭之感」に戻しますけれども、この句ってやっぱり不可思議ですわよね。死を目前にした人に統合性を求めるってのもアレですけど、それでも何か不可思議な内容なんすよね。この世のすべてに疑問を持って、とりあえず「不可解」って答えを出して、絶望するのと安心するのって超似てるとか云って己の人生の幕を引いたわけですから、結局何がしたいねんってゆー話ですわよね。「解らん」と絶望して「答えは“解らん”だ」と安心して、「あ、やっぱダメだわ」って結果を選ぶ過程がよく判らないんですよねえ。まぁ現在で云う東大生の彼と、全プリキュアのフルネームと必殺技が云えるのが数少ない自慢でしかない私の頭脳を比べること自体がナンセンスかもしれないっすけど、それでもやっぱり理解は出来ないんすよねえ。まぁ、うん、無理やりに解ろうとするならばですけれど、この「不可解」ってのを「わけがわからないよ」と訳すんじゃなくて、「答えを出しちゃいけない」と無理やり解釈するなら、一応意味は通るんすよね。この世はわけがわからない。もしかして答えなんか出しちゃいけないのかしら。そんな世なら死ぬのも生きるのも一緒だ。これなら全プリキュアのお母さんの名前が云えるのが数少ない自慢でしかない私にもギリギリ判るんですよね…………とかまぁ此処まで色々と書き殴ってきましたけれども、結局のところ、まぁどうでもいいや。個人的には今日呑むビールが美味しかったら、ネギと鰹節をたっぷりかけた冷奴が美味しかったら、この世のすべてがおかしかろうと大体良いです。